コンセプト

 

イタリア
私は大学時代に初めてイタリアを旅して以来、この国の魅力にとりつかれて、1984年から4年間ミラノに住む機会を得ました。この間に体験した様々なことが、私の「ものづくり」の原点となっております。「美しくあること」「楽しむこと」「遊び心を持つこと」これらはイタリア人気質の源です。
ミラノ・・・街の魅力
美しい街に住みたい!これが私の強い思いでした。ミラノはイタリアの北部に位置し、他のヨーロッパ諸国と隣接していることもあって、国際色豊かな文化の薫る美しい街のひとつです。中でもドゥオーモは端正なプロポーションを持つゴシック様式の大聖堂で、その建設には約500年を要したとのこと。美を獲得するためには何と偉大な時の力が必要なことかと実感します。
一方、ミラノ中央駅は世界中でも屈指の壮大かつ洗練された駅です。この駅は大理石等を用いた大空間の荘厳なエントランス部分と、鉄骨造の屋根を持つ美しい軽快なプラットフォームにより組み合わされ、その存在感は人々に感動と夢を与えてくれます。
美しい街ミラノには、こうした風景がちりばめられているのです。
 
イタリア人の建築家・・・奥の深いデザイン
二人のイタリア人建築家のもとで、私は仕事に携わる機会を得ました。
まず当時デ・カルロ事務所にいた時のことです。かつて古い修道院だった建物を、氏はあえてできるだけ残して新しく再生する方針の計画を立てました。
そこで私は氏に質問をしました。「私達は優秀な建築家ですから、古い建物を解体しても新しくすばらしい建物を作れますよね!」氏は答えました。「勿論だよ。ではなぜ壊さないのかって?それは街や人々の記憶を残すためだよ。」
この「記憶」という深い言葉が、私にとって歴史や文化について考察する大切さを教えてくれました。
一方、当時のチッテリオ事務所で照明器具のデザインに携わった時のことです。私が器具のかたちのデザインをいくつか提案した時、氏は一言。「照明器具のデザインはかたちそのものじゃない。あかりをデザインすることだよ。」
照明の方法次第で、あかりは夜の空間をすばらしく演出してくれます。それはまた豊かな時間の提供者でもあることを実感しました。
 
山岳都市・・・創造力の源
私はイタリアの山岳都市が大好きです。
例えばトスカーナ地方のシエナ(歴史地区は世界遺産です。)の街には、時を告げる鐘楼や人々が毎日のように集い行き交うシェル状の美しい広場があります。この広場から放射状に延びている11本の路地には、緩やかな階段やスロープの石畳が続いており、広場の開放感とは対象的に人々の足音が響く静けさの漂う魅力的なところなのです。
このように山岳都市の風景や空気を思い描くたびに創造力をかき立てられ、ものづくりへの無限の可能性を私はいつも感じています。
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色
「色」は人の心を豊かにしてくれます。
私達は日々の営みの中で、衣、食、住に関わるあらゆることについて常に「色」と接しています。そんな中、「はっと驚く色のシーン」に出会ったことは誰にでもあるのではないでしょうか?色にはそうした神秘的とも言える魔力が備わっています。そこで私は建築やインテリアをデザインする上で、色が人に与える驚きや感動を得るために3つのキーワードを考えております。
色の組み合わせ・・・ムーブメント
色には心理的に迫って来たり遠のいて行くように感じる色や、空間が広く見えたり狭く感じる色といった様々な性格があります。
そしてこれらの色には相性の良い仲間がいます。このことを踏まえながら色の組み合わせと配色のプロポーションを吟味することにより、空間に心地良い「動き」や「変化」をもたらすことができます。
こうした中から豊かな生活リズムが生み出されてくるものと私は考えております。
 
色による表現・・・メッセージとイメージ
色は人に様々な「メッセージ」を伝えてくれます。例えば、青色は静寂、落ち着き、沈黙といった心理的作用を与えてくれます。
一方、人は色から様々な「イメージ」を浮かべます。例えば青色から空や海を想像するのはたやすいことでしょう。ただし、青色といっても無限にあるわけで、個人的な感覚や好みに大きく左右されるわけです。
このように色による「メッセージ」と「イメージ」は、建築デザインの重要な表現手段となります。特に私は喜び、楽しみ、さわやかさといった明るい印象を建築に与えられるよう心がけております。
 
色と輝き・・・ガラスモザイクタイル
同じ色でも素材によってその表情は大きく変わります。
私が好んで使う素材のひとつに、ガラスモザイクタイルがあります。その中でもイタリアのBisazza社製は、彩度の優れた色味と豊富な色幅(100種類以上)に合わせて良質の質感と透明感を持っています。
また私は大きさ20ミリ角のタイルをよく使います。なぜなら、小さいタイルの持つ繊細さと、目地があることによって、くっきりと浮かび上がる素材感に魅力を感じるからです。
この素材感は、ガラスの持つ透明感と澄んだ色彩の輝きから生まれるもので、光の当たり方によって変化に富んだ豊かな表情を与えてくれます。
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時間
時計では計れない「時間」
それはとても不思議で魅力的なものです。
この「時間」をデザインすることに私は強く興味を抱いております。
心理的時間・・・心のゆとり
私達は日々、仕事や家事で時間に追われている時、その合間をぬって例えば温泉に行き、湯舟にゆっくりつかるだけでリラックスした気持ちになれるものでしょう。なぜならこの時、自分の中に自分だけのゆったりとした時間が流れるからなのです。
こうした時間を時計では決して計れない「心理的時間」と呼びます。この「心理的時間」は、一人一人に異なった早さや感覚で流れているものです。ただしこれは忙しいだけの生活環境の中では生まれない時間です。
機能的、効率的、利便性といった言葉のもとに、多くの人は「心のゆとり」を失いがちです。しかしながら、人は「心のゆとり」を持つことで、今までにない新鮮な発見や驚き、感動を得ることができるのではないでしょうか?
そこで私は住まいでも、仕事場でも、またアートと接する場でも、私達に「ゆとり」をもたらしてくれる環境づくりを重要なテーマとしております。
 
体内時間・・・身体のリズム
人には「体内時間」というものがあります。
本来、人は自然の中の一部です。自然のリズムから離れて機械のように動いていては、体内のリズムに支障をきたすことになるでしょう。そこで快適な体内時間が得られるように、自然と建物との関わり合いを大切に考えたいと思います。
例えば自然には、太陽の光や風のように建物に入り込んでくるものがいくつもあります。朝陽と涼風で目覚める一日はとても気持ちの良いものです。
また、空や星、海や山といった自然の風景を建物に取り入れることで、豊かな住空間を生み出すことができます。さらに建物と自然による庭とがバランス良くつながっていることも大切です。
このように自然と建物との豊かな関係を生み出すことによって、初めて人は心地良い身体のリズムを得ることができるものと考えております。
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